「病気は回復を強く願うほど重くなる」
──その正体は“脳とホルモン”のメカニズムだった
〜否定形を理解しない脳〜
私たちの脳は、回復への期待が高まると「やる気ホルモン(ドーパミン)」と「緊張ホルモン(ノルアドレナリン)」を分泌します。
期待通りに物事が進めば、安心感をもたらすエンドルフィンが出て、心も体もリラックスできます。
うまくいかない時はノルアドレナリンが過剰になり、イライラや不安が増幅します。
この状態が長く続くと、**ストレスホルモン(コルチゾール)**が慢性的に分泌されるようになり、
免疫力低下・高血圧・高血糖など、体の不調や病気につながっていきます。
つまり、「よくなりたい」という強い願いは、「病気である自分」を強調してイメージをつくるため、かえって脳を緊張させ、病を深めることになるのでした。
◆1. 「ストレス状態」とは
■戦うか逃げるか

たとえば、狩猟時代。
森の中で突然、オオカミの群れに遭遇したとしたら──
脳と身体はすぐに「生き残るためのモード」に切り替わります。
▶その時、体に起こる変化:
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心拍数が上昇(いつでも動けるように)
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血圧・血糖値が上がる(エネルギーを即供給)
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血液が筋肉に集中(戦うか逃げるかの準備)
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消化や免疫、痛みを感じる機能は一時停止(余計な処理は後回し)
この状態を医学的には、
「交感神経が優位になった状態」=ストレス反応と呼びます。
◆2. 現代社会での悩みは「対人関係」
「群れで生きる知恵」
人類は本来、集団を作って助け合いながら生きる生物です。
仲間と協力し合うことで、他の動物にはない高度な生存戦略を築き、地球全体に広がっていきました。
現代は、テクノロジーの進化により、
他人と深く関わらなくても生きられる社会になりました。
にもかかわらず、以前よりも強い**対人関係のストレス**を抱えるようになっています。
「評価のズレ」から生まれるストレス
人は、無意識に自分の努力や価値を実際よりも1〜2ランク高く見積もる傾向があります。
その結果、他者と自分との間にズレが生まれます:
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「こんなに頑張っているのに、評価されない」
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「感謝もされず、報われない」
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「私の方が正しい。だから私の言うことを聞くべきだ!」
こうした自己評価と他者評価のズレが、不満や苛立ち、そして慢性的なストレスの原因になっていきます。
会社でも家庭でも「マウンティング合戦」

現代の多くの人は、家庭でも会社でも、
知らず知らずのうちに**「どちらが上か」のマウンティング合戦**を繰り広げます。
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「私の方が大変」「自分の方が頑張っている」
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相手を下に見ることで、自分の価値を保とうとする
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でも、相手からの承認が得られず、イライラがたまる
こうして、人間関係そのものがストレスの温床となり、心も体も「戦うか、逃げるか」の緊張状態に入っていきます。
その結果、**ストレスホルモン(コルチゾール)**が分泌され続け、
生活するだけで、身体や自律神経にも深刻な影響を及ぼしていくのです。
コミュニティを作る事が人間の強みであらにも関わらず、本来、助け合うことで強いコミュニティを作ってきた人間関係が、今では緊張と対立の場になってしまっている──
これが、現代ストレスの正体です。
◆3. 言葉の性質がストレスを生む
〜伝える力と受け取る力の未発達がもたらす現代病〜
◆1. 言葉は「本質を削ぎ落とすツール」
人間の言葉は便利な反面、多くの情報を切り捨る側面があります。
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言葉は「象徴」や「代表表現」であり、伝えたい感情や意図の一部を切り取ることで、コミュニケーションをスムーズにします。
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反面、伝える側と受け取る側の言葉の能力に応じて解釈にズレが生まれやすくなります
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「そんなつもりじゃなかったのに」「言った・言わない」の食い違いが積み重なり、人間関係を壊す原因となるのです
つまり、言葉は「便利な道具」であるはずが、現代社会の中では逆にストレスの温床にもなってしまっています。
◆2. 言葉を使っても、通じない現代人
現代社会では、テクノロジーや個人主義の進行により、組織や集団での濃密なコミュニケーションの機会が激減しています。
その結果──言葉を使う能力を磨く機会がなく
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一方的に話すだけで、「相手にどう伝わるか」を考えない人が増え
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「伝えたつもり」でも、意図がまったく伝えられない人
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それがすれ違い・誤解となり、無意識のストレスを生みます
◆3. 言葉のすれ違いが体に与える影響
意思疎通の失敗は、単なる「不快感」では終わりません。
継続的なストレスとなり、次のような身体的影響を引き起こします:
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交感神経が過剰に働き続ける(=緊張状態)
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**コルチゾール(ストレスホルモン)**が慢性的に分泌される
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その結果、
→ 免疫力が低下
→ 血糖値・血圧が上昇
→ 睡眠の質が下がる
→ 慢性疲労・不調・病気が起こる
これはまさに、**「言葉を操れない身体」**が現代にあふれている証です。
言葉は、感情や意図の“代表”に過ぎず、多くの情報を削げ落とす道具です
だからこそ、伝え方・受け取り方の力が育たなければ、誤解が増えてストレスが増える
そしてそれは、心の問題ではなく、身体の病気として表れてくる時代になっています