脳と私たちの行動の秘密
〜私たちの行動を支配する脳〜
◆ 脳を科学的に知る

人の脳には、常に膨大な情報が流れ込んでいます。しかし、そのほとんどは無意識下で処理されています。
例えば、普段は気にならないBGMも「意識を向けた瞬間」ーにだけ聞こえてきます。
つまり、私たちが見ている現実とは「脳が意識的に選んだ一部」に過ぎず、残りは無意識が処理します。
◆ 脳は省エネ構造
意識と無意識の処理量を人の人数に例えると「1人:5500人」。
脳は非常にエネルギーを消費する臓器のため、フル稼働させるとすぐにエネルギーが枯渇してしまいます。
そのため、生命維持や日常のほとんどの動きは「無意識」がコントロールしているのです。
脳の「三つの階層」
人間の脳は一枚岩ではなく、大きく三つの階層で構成されています。
① 爬虫類脳(本能の脳) 🦎
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役割:生き延びるための即時反応を担当
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特徴:食欲・性欲・恐怖に反応し、短期的な満足を求める
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行動例:衝動買い、過食、逃げ腰の反応
👉 一番古い脳で「生存の門番」とも言える存在。

② 哺乳類脳(感情の脳) 🐶
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役割:集団で生きるための感情や関係性を司る
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特徴:仲間意識、愛情、孤独への不安
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行動例:「嫌われたくない」「安心したい」という感情に敏感
👉 孤独や不安を嫌い、人間関係に深く影響する。
③ 人間脳(理性の脳) 🧑💻
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役割:思考・計画・未来予測を司る
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特徴:データや理論で判断するが、冷酷な決断も可能
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行動例:長期的な目標設定、社会的な価値の追求
👉 最も新しい脳で、最もエネルギーを消費する。
◆ 三つの脳がバラバラに動くことで葛藤が生まれる
例えば「ダイエット中なのにケーキを食べてしまう」という場面。
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人間脳 → 「食べない方が健康的だ」
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哺乳類脳 → 「友達と一緒に食べたい」
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爬虫類脳 → 「甘いものを今食べたい!」
このように脳の階層ごとに異なる指令を出すため、私たちは葛藤に苦しみ、行動が止まったり、衝動に負けてしまったりします。
◆ テレビCMは三つの脳を巧みに刺激する
※企業の広告は、この脳の仕組みを理解した上で作られています。
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爬虫類脳には「スピード感・刺激・快楽」を訴える
(例:スポーツカーの加速シーン)。
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哺乳類脳には「みんなに愛される」「家族の笑顔」を描く
(例:家族で出かける車のCM)。
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人間脳には「安全性能」「燃費の良さ」といったデータを提示。

※クレジットカードのCMも同じです。
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本能 → 「今すぐ買える!ラク!」
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感情 → 「欲しい物をすぐに買える、カッコ良さ」ステイタス
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理性 → 「金利ゼロ、年会費無料でお得」
三つの脳を同時に刺激することで、消費意欲を自然に掻き立てているのです。
◆ 広告に乗せられた結果
「幸せな家庭」を夢見て(イメージして)ローンで車を購入。
しかし、返済のために共働きになり、家庭よりお金が優先に…。
本当に欲しかったのは“車”ではなく“愛のある家庭”だったはずなのに、残ったのは借金と現実のギャップ。
※こんなことが、日常的に起きています。
◆ドーパミン漏れ
現代の消費社会では、人の心理を研究し尽くした企業が「欲望のスイッチ」を押しています。
その結果、私たちは 本当の目的(幸せ・自己実現) ではなく、
「やっている感」や「刺激」にドーパミンを消費してしまいます。
ドーパミン漏れが引き起こす現象

- 未来を設計するエネルギーが不足する
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建設的なコミュニケーションが取れなく、感情のつじつま合わせだけにエネルギーを費やす
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「自分だけ損をしている。お前も同じ苦しみを味わえ!」という被害者意識に陥る
情報社会に振り回される現代人は、ドーパミンを本来の目的に使えず、エネルギーを浪費させられているのです。